ご神体を中心とした媒体ビジネスーーITmedia、Engadget、スマニューを経て感じたネットメディアの在り方とは?

『ITmedia Biz.ID(その後「誠 Biz.ID」、現「ITmedia ビジネスオンライン」の前身)』や『Engadget日本版』の編集長、スマートニュースでのメディア開発事業、更にはGMOインターネットをはじめとする各社のオウンドメディア立ち上げに関わってきた鷹木創さん。様々な側面からメディアに携わってきた鷹木さんだからこそ分かる、今後生き残るメディアやメディアのあるべき姿についてお話頂いた。(聞き手:根本雛子  連載企画:学生が迫る、メディアの担い手の素顔)

インターネットメディアに興味を持ったきっかけ

ーー複数媒体の編集長やオウンドメディア立ち上げサポートなど、多岐にわたる経歴をお持ちですが、メディア業界に興味を持たれたのはなぜですか。

最初はとてもぼんやりした動機で、「記者なら時間も自由そうだし興味あることを追いかけられて楽しそうだな」という程度でした。しかし、私が就職活動をした不況下の2001年はいわゆる氷河期世代で希望していたメディア業界には入れず、最終的に『もしもしホットライン』、現在の『りらいあコミュニケーションズ』という三井物産系のコールセンターを受託運営する会社に営業職として勤務することになりました。当初は希望していなかった業種でしたが、実はここでの経験が自身のネットニュースでのキャリアを後押ししてくれたんです。

ーー『もしもしホットライン』内でのご経験について詳しく教えてください。

営業職をしている時に、当時のソフトバンクがYahoo!BBのプロジェクトを進めようとしていました。このプロジェクトはソフトバンクの社運をかけたインターネット回線の新サービスで、そのためのコールセンター業務を受注し、私もそのチームに携わることになりました。そこでとても印象的だったのが、社長の孫正義さんが「NTTを倒すんだ」という意気込みでそのプロジェクトを進めようとしていたことです。私が接してきた経営者の中で初めて感じた、孫さんのすごく強いバイタリティーは衝撃でした。

当時様々なメディアがYahoo!BBの開通状況やサービスについて盛んに報じていたのですが、孫さんは毎日のようにコールセンターに「こういうネットニュースが出たから対応に気をつけて」とその記事のURLを送信してきました。この時に私はビビっと来ました。つまり、「孫さんみたいな世界を股にかけて突っ走っているビジネスマンがネットのニュース媒体を信じている。これはもうすぐメディアもネットの時代になるな」と、そのとき直感したんです。

ネットメディアで積まれたキャリア

ーーその後、ネットメディアに携わった具体的なキャリアについて教えてください。

『もしもしホットライン』を約1年で退職した後、Impress Watch編集部でアルバイトとして勤務を始めました。ここは孫さんが毎日のようにコールセンターに送ってきた記事を配信していた媒体の1つです。アルバイトでしたので収入は減りましたが、それよりも最先端の分野でメディア活動をすることの方が若い私にとっては重要でした。

それに、実際入社してみたらとても楽しかったこともあります。インプレスは日本のIT業界を引っ張っていた専門出版社・アスキーにルーツがあることからテクノロジー関連に強く、テクノロジーに関する企画ならかなり自由でした。マニアックな先輩たちもすごく沢山いて、そういう人達が夜中までテクノロジーに関することをずっと話してるんですね、そこもたまらなく良くて。なので私が記者として、編集者として最初のキャリアをインプレスで積めたことは非常にラッキーだったと思っています。

ーーなぜ、インプレスでの継続勤務ではなく、アイティメディアにキャリアを移されたのですか。

インプレスには私達の年代、当時20代後半の人たちが結構多くいました。彼らは私と同じように、メディア志望だったけれどメディアには入れず、でもすごく情報に対するアンテナを持ってインターネットメディアの将来を信じていたような人達です。そのような人達と切磋琢磨して修行し、次第に自分で記事が書けるようになっていくにつれ、収入に不満を持つようになりました。どうしてこんなにいい会社で山のように記事を書いているのにお金がもらえないのか、ということです。

そのような考えを巡らせている中で「どうやらソフトバンク傘下のアイティメディアという会社の給料が良いらしいよ」みたいな話を聞きつけて、それで転職を考えるようになりました。ちょうど当時アイティメディアでも新しい媒体の予定があって新しいスタッフを入れようとしていたんですね。タイミングがあったのか、その新しい媒体要員として採用してもらうことになったんです。

ーー入社後のご経験について詳しく教えてください。

ウェブメディアのビジネスに可能性があると気が付きました。ただウェブサイトにバナーを貼るだけではなくてタイアップ記事もつけましょうとか、このタイアップ記事にイベントもつけましょうとか。そのようなことを一生懸命やる会社で、その分営業リソースも潤沢でした。また、売上高に関してもインプレスが8億円程度の時に、ITmediaは18億円程度あり、この2つのメディアのビジネスの差からやり方次第でウェブメディアは儲かる事業だと気が付いたのです。

ページビューが絶対ではないと学べたのもよかったです。例えば、 Windowsエンジニア向けのメディアを作るとします。このページはWindowsのエンジニアリングについてしか扱わないないため、ページビューは一般メディアよりも減ります。ところが、こうしたメディアが物凄く儲かるんです。なぜならそのメディアを見ているのは、知識もアンテナ感度もある Windowsエンジニアなのです。こうした読者を押さえることで、あとはSNSなどを通じて情報が広がっていきます。広告的にも価値の高い読者ということで、結果的にページビューが少なくても売り上げを積み上げられる媒体となるでしょう。
逆に、人数の多い層へ向けて広告を出そうとなるとノイズも入るしお金もかかります。 むしろ、かけた費用に対してパフォーマンスがきちんと得られるほうが広告主にとっては重要です。ページビューをやみくもに追いかけるのではなく、良い読者をどう囲み、その読者へどうアクセスできるようにしておくかが重要なのです。

編集長としてのキャリア

ーーBiz.ID編集長にはどのようなきっかけで就任されたのですか。

入社当初は媒体の発案者である先輩編集者が編集長をやっていたのですが、彼が昇進することになり、その代わりに私が任命されたような形です。ですから、元々そんな「やりたい!」というような感じではなく、「え、オレが?」という感じでした。

ーー編集長としての具体的な経験について教えて下さい。

Biz.IDは新興媒体で規模も小さかったので、運営には紆余曲折ありました。最初はライフハックなどを取り上げていましたが、ライフハックとはそもそも「新しい製品を買わないでうまいことをやるぞ」みたいなところがあり、ページビューは取れるかもしれませんが、新製品の広告を出したい媒体にはなかなかなりません。加えて、ちょうど編集長になったタイミングにリーマンショックが重なってしまい、媒体自体がすごく落ち込みました。売り上げが落ち、売り上げが落ちるとページビューも落ち込むという悪い循環に陥った結果、私の部下も異動することになり、編集部には私以外誰もいない状態になってしまったんです。

部下が2〜3人いた頃は部下本人にとっても会社にとってもいいことだと思って厳しく接していたのですが、1人になって業務を重ねてみるとそれは全然いいことじゃなかったなと気が付きました。厳しく詰めていいことは1つもなかったですし、1人になった時に意気込んで頑張ってみたものの1ヶ月しか持たなくて。それで、やはり仲間が必要だなと思ったんです。1人で媒体は運営できないなと。なので、その気づきを与えてくれた1人での編集部も悪くなかったと思っています。

その後、気持ちを入れ替えて全てを受け入れる気持ちで業務にあたっていたら、編集部と仲の悪かった社内の他の営業マンからも「あそこがやってくれなかった案件、鷹木さんのとこでやらない?」みたいな形で声を掛けてもらえるようになってきて。それも誠実にこなしていたら、結果として翌年の業績は倍増しました。いわゆるV字回復です。

特に面白いと感じたのは、ページビューを上げようと思って一生懸命頑張ってた時はページビューが上がらなかったのに、記事本数を減らして営業を手伝った結果、ページビューも下がらず逆に売り上げが立ったことです。このことから、媒体にとって良い読者は簡単には離れないこと、読者を失うんじゃないかと怖気づいていたのは間違っていたと、学ぶことができました。

ーーEngadget 日本版の編集長も務められたと思うのですが、その経緯はどのようなものなのでしょうか。

インプレス時代の先輩で外資系に転職した編集者から、同じ会社のEngadgetという媒体が大変なんだという話を聞きました。2012年12月だったでしょうか「どうにか立て直してほしいんだ」と依頼されたんです。当時はビジネス領域を担当していたため、ガジェットを扱うような趣味性の高い媒体に対してあまり興味がなかったのですが、「なるべく早く。2月には来てほしい」と言われました。

ーーすごく近々ですね。

ええ。媒体の管理職として、新年度の計画を作る一番大変な時期を空けるわけにはいかないと最初は思っていました。ですが、話をよく聞いてみると、鷹木の実績をとても評価してくれていたんですね。そこで「おっ」と思いまして。

妻にも話をした結果、Engadget側の話を受けることになったのですが、その時点ではEngadget側でも本国(米国)からの最終的な承認が取れていませんでした。つまり私は「ITmediaをやめてEngadgetに行きます」と言ったものの、本国が納得しなくて選考で落ちるという可能性があったわけです。それについても自分の中で話がまとまったタイミングで、正直にアイティメディアの社長に話したところ、「分かった」と。「今いる媒体には戻れないかもしれないが、もしそうなったら戻ってこい」。そんな風にとてもうれしい言葉を掛けてもらいました。ですから、社長のおかげで不安要素なく転職の決断ができたのです。

ーー異なる二つの媒体で編集長をされていましたが、総括して編集長としてのやりがいや苦労はどこにありますか?

編集長の仕事の中で思い通りになったことは一度もないです。それは記事一本にしても同じです。ですが面白いと感じるのは、自分の思い通りではない記事が記事としてもダメなのかというとそうでもなく、「私だったらこうは書かないけど、これはこれでいい記事だな」と思うことが何回もありました。ですので、自分の思っていないことも受け入れられないと編集長はできないなと思います。

ーーITmedia時代での「編集の仕事には仲間が必要だ」という気づきや受け入れる気持ちを持つのが大事という点で共通していますね。

やはり、ITmediaで管理職の仕事をやっていた頃は「きつく言えば人は分かってくれる」という間違った考えが私の中に強くありました。ですが、やっぱり皆ひとりの人間で、やる気があり、その中で強引に「編集長の私がやりたいからこれやって」というのは相当難しいことなんだなと当時の経験から学び、今もそのように思っています。なのでなるべく編集長である自分が大きい絵を描いて、その中で皆と合意しながら詳細を詰めていくみたいなことが理想の形なのかなと思います。

ーー最終チェックを担うわけではなく、人をまとめて自分の絵に埋めていくのが編集長の仕事ということでしょうか。

いえ、埋めていくというか少しはみ出てもいいと思っています。例えば、Engadget Fesという1000人規模のイベントをやっていたときにも、最低限これはやってほしいというボトムラインは確認しましたけど、それ以外を各分担をした人の裁量にある程度任せていました。経費がかさむのは辛いけれど、変な方向に行ってしまうのも含めて上振れ分にはいいんじゃないかなと。

ーー目をつぶる部分もあったみたいなことですかね

つぶらざるを得ないというか、つぶらないと進まないという感じです。結果として上司と議論もしましたが、私のやり方としてはこのような形でした。
オウンドメディア立ち上げサポート

ーーオウンドメディアのサポートに携わるきっかけはいつですか。

サポート自体を始めたのは2017年です。当時勤めていたスマートニュースの副業として始めてみた形です。私は元々記者なので、各企業の広報とか代理店の方と仲が良くて。その方面の方たちが、私がコンテンツの制作から離れてスマートニュースに行った話を聞いた際に「メディア持ってないならいいでしょ?」みたいなアプローチで話をしてきて、そこからいくつか仕事を頂きました。日本IBMのようなグローバル企業をお手伝いしたこともありますが、それも代理店の方から話を頂いた形です。もちろん直接、メーカーさんから手伝ってほしいと言われるケースもあります。

ーーオウンドメディアサポートと編集長のお仕事との共通点はありますか。

メディアに携わる上で、目的を持ってなにかを伝えるというのはどちらも共通しています。ですが、その目的は違います。具体的に通常メディアの目的を、メディアという事業体で編集者の好きなことを発信し、お客さんを呼び込んでビジネスを成功させるものだとすると、オウンドメディアはメインの事業体が別にあって、その事業体をサポートするような情報発信をすることを目的にしてるような形です。

またオウンドメディア独自の難しさとして、企業側があまり読者について知らないことがあります。例えば営業系のオウンドメディアだと担当の方から、どうしてもこれが売りたいとストレートに要求されます。ですが、押し売りみたいに情報をゴリ押ししても、読者は受け付けてくれません。読者が受け取りやすい形に加工する、編集作業が大事になります。読者はどういう情報を欲していて、そのためにどういうコンテンツが必要なのかについて考える必要があります。

とはいえ、「営業としてはこれが売りたいんです」というお話も普通にいただきます。ですから、翻訳係のような立ち位置として私のような立場の人が「読者にこういうことをしたいならこういう企画が必要です」といった話をする必要が出てきます。

「ご神体」を中心とする媒体ビジネスの必要性

ーー読者にとってどういうメディアであるかが重要だとの話が出たのですが、今年1月から始められたGMOインターネットのオウンドメディア『i4U』はどのような目標をお持ちですか。

『i4U』に限らず様々な場所で言っている話ですが、やはりメディアの中でも特にニッチな層を狙う媒体というのは、新聞やテレビ局などの大きな媒体とはまた違う戦い方が必要だと思っています。そしてそれは、視聴者と一緒に媒体を作るというところにあります。大きい媒体は社会に存在する情報格差を埋めるために働くので、どうしても一方通行感が出てしまいます。この存在を全く否定するわけではないのですが、小さなメディアが大きなメディアと同じことをし続けるのはかなり大変です。

では、小さなメディアはどう戦うべきか。Appleの発表会を例にしますと、その発表はほんの10年前までAppleの本社があるサンフランシスコに行かないと見ることができませんでした。しかも、英語での発表なのでメディアが代わりに取材をして日本語に直し、それを届ける必要もありました。ですが、最近ではその情報を動画かつ日本語の同時通訳で得られるようになりました。つまり、視聴者も記者と同じ情報に接することができるようになってしまったんです。

それどころか制作予算もあまり持っていないような編集部では、やはりその情報が大好きで24時間戦っているようなブロガーさんたちに勝てません。では、小さなメディアはどう戦うかといったら「戦うのではなくて一緒にやる」という方向なのだと思います。

よく言っているのですが、Engadget 日本版の場合はGadgetという「ご神体」があるんですね。編集者はご神体を祀る神主さんというわけです。時にはご神体を「御神輿」に乗せて、読者と一緒に担ぐ時もあります。でも段々「ご神体」から離れるにしたがって、同心円は広くなる一方で「ご神体」に対する熱意は下がっていき、最後はYahoo!ニュースで見たよみたいな人しか残らない。今の媒体って、その一番外側のYahoo!ニュースでみたよというページビューを追っかけているばかりなんですよ。でもこれって本当に媒体にとって必要なのかと私は疑問に思っていて。

Engadgetでうまくいったなと思っているのはこのお神輿を一緒に担いでくれた真ん中の読者がすごく素敵だったこと。今でもお付き合いがあるくらいです。つまり、ガジェットという「ご神体」を中心にコミュニティ化していて、Gadgetと一心同体でいてくれます。もちろんそういう読者ばかりでなくて、イベントも有料だと言った瞬間に来ない人達もいるし、無料でも行かないという人もいます。ですが、コミュニティ化の強みを見るとやはり「ご神体」の同心円の外の方にいる人達をどうやって中心に寄せていけるかが小さな媒体の戦略だと考えていて、その「神社」を『i4U』に限らずオウンドメディアで作れたらいいなと思っています。

『i4U』に関してもGMOグループという「ご神体」に対して、どうしたら皆ファンになってくれて、一緒に「御神輿」を担いでくれるかなと模索しています。逆に読者と私たちが敵対してしまうというのは一番良くなくて、それを防ぐためにも「神主たち」や編集者が「ご神体」の良さをいかに引き出していくかが、小さなメディアとしてできることだと思います。

ーー確かにYahoo!ニュースのコメント欄ですと、読者が記事自体を炎上させていたりするのも見ます。そこに私自身馴染みがあったので、皆で「神輿」を担ぐという発想は全くなかったです。

この運営方法はいろいろな媒体でできると思っています。そうすると、前半に述べたページビューだけを追いかけるのは意味がないという話にもつながります。もちろんアドセンスのようなページビュー関係で売れていく広告に関しては、それはそれでいいと思いますが、それで果たして媒体のファンになっているかというとそうではありません。なので、「ご神体」を中心とする媒体ビジネスを展開し「ご神体」に寄ってくるほどタイアップ記事やイベントも売れ、課金もしてくれる。このようにビジネスの幅を広げる必要があると考えています。

何もないところで人の心は動かされません。絶対何かがあって、感動します。つまりそれはコンテンツで、それが人を動かすんです。その感動の源泉であるコンテンツをどう世の中に出すのかを考えるのがメディアであって、逆にそれを「ご神体」から遠い部分の人達に向けて出してしまうのは、もったいなさすぎるのではないでしょうか。

生き残っていくメディアの形

ーービジネスの幅を広げる点で今まで話してくださった形態が強いというのは分かったのですが、総合的に見て今後生き残っていけるメディアとはどのようなメディアでしょうか。

難しい質問ですね。でも『KAI-YOU』というカルチャー系のメディアを例にしてみると、彼らはページビューだけを追うのを止めてロイヤリティの高い読者とコミュニティを作る方向性にかじを切っています。鷹木の言い方で言えば、彼らの信じるカルチャーを「ご神体」にして、読者に追わせるようにしたということです。それは「ご神体」を持っている会社だからできたことですが、そのように「ご神体」という一本筋を持っていてページビューだけではない勝負のできる媒体にしないと、生き残ることはできないだろうなと思います。

ーー他に一本軸があったうえで、プラスの手段としてメディアを使うのが賢いということですか。

今の話は少し面白いと思っていて、メディアを使うみたいな話で行くと、メディアがコンテンツなのかサービスなのかという議論は昔からあります。私は結論どっちもありだと思っていますが、Engadgetはどちらかというとガジェット好きの人のためのコンテンツ、各々のストーリーの集まりで、その点サービスにはなれません。一方で、価格.comという電気製品の価格比較ウェブサイトはどうでしょう。こちらは価格情報というコンテンツを扱っていますが、サービスとして閲覧者に使用されています。

誤解を恐れずに言いますと、サービスはコンテンツと違って代わりが効きます。三省堂の辞書と小学館の辞書はどちらも便利で辞書としての価値はあるけれど、どちらを使ってもいい。これがサービスです。その一方で、ドラゴンボールとスターウォーズは取り替えられません。こちらがストーリーです。ですが、ストーリーは別になくても生きていけるのに対し、サービスは生活やビジネスに根ざしたものです。だからこそストーリー作りは難しく、そしてハマれば根強いファンが付きます。このことから私は、もっとメディアはファンを根付かせるためにも、媒体はストーリーを作った方がいいと考えています。

ーー1人1人とメディアが繋がれる社会だからこそ、ストーリーを読者に共感してもらい「ご神体」をたて、そこからファンを増やすという流れを持つことが、生き残っていけるメディアの特徴ということでしょうか。

いくつか生き残っていく形はあると思いますが、私が述べたことは生き残っていける一つの形だと思います。人の役に立っているサービスのやり方が決して悪いわけではなく、サービスのメディアも必要とされれば生き残っていきます。

今後の展望

ーーご自身が考えているキャリア展開について教えていただきたいです。

キャリアと家庭との両立が今の目標です。家庭の話をすると、2020年に3人目の子どもが生まれ、5人家族になりました。新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、皆さん家族と過ごす時間が増えたと思いますが、その中で「私って全然お父さんではなかったな」と改めて思ったんです。なので子どもが小さいうちはお父さんをやる、というか「お父さんと仕事をどうやって両立するか」が私のテーマとなっています。具体的には週休4日程度で、仕事が回せるといいなと思っています。そう簡単に上手くいくか分かりませんが、週休4日でも実はチャレンジができるし、自分のしたい仕事もできるんだよと言いたいです。 鷹木 創のポートフォリオ メディアの担い手のための審査制プラットフォームChrophy(クロフィー):ポートフォリオ作成からAI文字起こしまで chrophy.com

鷹木創
ITmediaにて『ITmedia Biz.ID』の立ち上げや編集長を務めた後、Engadget 日本版の編集長に着任。その後IBM、さくらインターネットなど各社のオウンドメディア立ち上げ/運営のサポートを開始し、スマートニュース在籍中に著書『オウンドメディアのつくりかた 「自分たちでつくる」ためのメディア運営』を出版。現在はGMOインターネットグループのオウンドメディア『i4U』を始めとする各種オウンドメディアのサポートに携わっている。過去記事はこちらから。

聞き手&執筆担当 根本雛子
株式会社クロフィー インターン
上智大学総合人間科学部3年

編集後記:メディア業界を志望する学生として、様々な媒体の第一線で活躍されている鷹木さんから初回インタビューをさせて頂けたのはとても光栄であった。個人が情報に簡単にアクセスできる現代で、情報と閲覧者の「中間」であるべきメディアが生き残るためには媒体や情報自体に新鮮さを求めるのではなく、鷹木さんのおっしゃった「ご神体」のファンになってもらうことをどの媒体でも意識することが重要なのではないだろうか。

本連載企画について:メディア関係者と広報PR関係者のための業務効率化クラウドサービスを開発する株式会社クロフィーでは、両ユーザーに向けた本連載企画を行っております。編集は庄司裕見子、サポートは土橋克寿

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