難度が高いグローバルBtoB広報、その活動の軸とは?〜英語教育業界を経てAI電話のRevCommへ〜

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音声解析AI電話MiiTel(ミーテル)を提供するRevComm(レブコム)社で広報活動に取り組む北村直子さん。これまでにTOEICプログラムを運営する財団法人での勤務のほか、英語教育業界では営業やマーケティングなど多岐にわたる業務に携わってきた。様々な業務を経験されてきた北村さんが捉える広報の価値や、今後の展望について話を伺った。(聞き手:廣川美雨 編集: 小南陽子 連載企画:学生が迫る、広報PRの担い手の素顔)

新しい価値を世の中へ伝える広報

ーー現在のRevComm社でのお仕事について教えてください。

広報専任として業務に携わっています。ここまで広報だけに専念する環境は実は初めてでして、そのこと自体は大変ありがたい環境だなと思う一方、大変な部分もあります。

弊社はBtoBなので、お取引先は企業のみとなり、個人のお客様とのお取引はありません。一般的にBtoB企業は、直接、個人消費者に興味喚起する必要性は低く、テレビCMや新聞広告、Web広告を行う際も、ターゲットである企業や企業の担当者に向けたものとなります。その中で我々のプロダクトやサービスが与える「社会的価値」をメディアを通じてお伝えしていくことの難しさを日々感じています。難しいからこそ、達成した時には嬉しくもあります。

我々のようにBtoB事業に携わる企業が考えるべきは、プロダクトを世の中に広めていくことで、直接的には関わらない生活者にもどのような価値があるかを伝えることです。そういったところまで想像力を膨らませなくてはならない、イマジネーションが重要になってくる仕事だと思います。

常に消費者の立場からの視点を軸とする

ーー広報専任になられる現在に至るまでの北村様の経歴を教えてください。

大学を卒業して「女性が働きやすい仕事」を目指し、まず百貨店に就職をしたのですが、当時はまだまだ男尊女卑の傾向が強く、理想と現実のギャップを感じてしまいました。その後、ISOという国際規格に関わる財団法人に転職しました。さらに転職を重ね、英語テストのTOEICを実施・運営している一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会に13年ほどおりました。その際に産休育休を経験し、「このまま同じ場所にいていいのか」という思いから、教育業界でジョブホッピングを始め、大手予備校、オンライン英会話や教育系ベンチャーなどの教育業界を経て、現在に至ります。

ーー現在のRevComm社へ入社されるまでに広報業務を担当してきて、仕事をする上で大事にされてきたことを教えてください。

これまで様々な業務を経験してきましたが、「新しい価値を誰かに伝える」という大きな枠では全て同じだと考えています。私自身、広報専任としての経験は浅いため、広報だけを専門にやってこられた方とは認識が違うかもしれませんが、営業であれ、販促やマーケティングの仕事であれ、そこに軸があると思います。広報と一言で言うと、おそらく多くの人がメディアとのリレーションを最初に想起してしまうと思いますが、「幅広く人に伝える」「新しい物の価値を伝える」という点は、営業やマーケテイング、広報でも変わらないと考えています。

ーー広報の面白みや苦労を感じた、印象的なエピソードはありますか?

現場でのメディアリレーションの仕事の一つが、人と人の間に入ることです。その狭間でどのように両者の意見を聞き、双方が納得のいく結果へと導けるかが、広報の重要な仕事の一つです。

具体的に言うと、前職で会社の取り組みをテレビで紹介していただく機会がありました。広報が間に入り、伝言ゲームのような形でそれに関わる人たちの意見を伝達します。それぞれの立場上、希望は異なるため、利害関係をまとめていくのが非常に大変です。これはどのような案件であっても共通することで、おそらく多くの広報の方々は同じような苦労をしながら、「これは裏で私が調整したから実現したんだ」という達成感を感じているんだろうなと想像します。

ーー広報PRと聞くと商品をアピールしたり宣伝するイメージでしたが、お仕事について少し調べた時に、「コミュニケーションがとても重要だ」と書いてあり、まさにそうなんだなと今お話を伺って感じました。

広報の仕事はメディアリレーションだけではなく、非常に幅広いです。華やかなイメージを持たれることも多いですが、ほとんどの業務が裏方で、自分自身が表に出ることはまずありません。その中で、自分の裏方仕事によって会社がメディアを通じて社会に紹介され、適正に評価されることが広報としてのやりがいです。

例えば、コロナ禍で子供たちの不登校が問題として取り上げられていた時、私が広報を担当していた教育関係の企業では、不登校になってしまった子供たちやその保護者に、勉強する手段を提案していました。その情報がメディアを通じて社会に広がることで「学校に行けなかった期間も一人で勉強できた」「おかげで〇〇ができた」といった言葉をいただくことが広報のだいご味であり、社会課題の解決に微力ながら貢献する貴重な経験を得ることができました。

「世の中の社会課題を解決する価値は何か」という点に重きを置き、自分たちが持っている製品・サービスと世の中とをつなぎ合わせる存在が広報の役目なのだと考えます。

時代とともに変化するグローバル社会においての需要

ーーRevComm社は海外と接点があるグローバルな企業だと聞いています。広報PRとし て海外と日本を繋ぐお仕事をされる上で、大事にしていることがあれば教えてください。

同じものを売るにしても、現地と日本の状況は大きく異なります。ですので、まずは現地の状況を良く知ることが大切だと思います。

例えば、商談やアポイントを取り付ける営業の電話一つにしてもそうです。日本やヨーロッパやアメリカでは、まず固定電話から始まり、次にIP電話、スマートフォン…といったように、インフラが徐々に整うというプロセスを歴史上経てきました。しかし、現在サービスを展開しているインドネシアでは、日本のようなプロセスを経ずにいきなりスマホを使いこなしますし、仕事をするにも社員同士の連絡手段は「What’s Up」がメインだというように日本とは全く違います。我々の扱うプロダクトを広めるには、現地の人たちの話をよく聞き、彼らの習慣を尊重しないと絶対に売れません。まず我々が彼らの文化を受け入れ、リスペクトすることが非常に大事だと常々思っています。

ーー業務内容とは少し離れてしまいますが、北村様が思う英語教育やグローバル化による需要、そして日本における課題についてお聞かせください。

私が英語教育に関わっていた時は、学校の授業でリスニングやスピーキングは一切ない時代でした。そのため、「これから日本の産業が海外に進出し、グローバルに活躍していくために英語は必須で、英語でコミュニケーションが取れることの重要性を世の中に知らしめる必要がある」と当時強く思いました。そこで、私の立場から学校や企業にもそれをお伝えすることに取り組んできました。その一例として、TOEICは英語学習を多くの人に広める手段として非常に強く機能したと思っています。まさに面白いタイミングで学校営業や広報に関われたのは、振り返ってみると楽しかった思い出があります。

今は技術的な進歩がすさまじく、スマホひとつあれば言語にほぼ困らない時代が来ています。そのため、英語コミュニケーション自体を習得する重要性は、当時よりは少し優先順位が下がっているのではないかと思います。

むしろ英語ができないからコミュニケーションが取れない、と後ろ向きになるのではなく、英語が得意不得意にかかわらずスマホなどのデジタルツールを使いこなして、より多くの人とやりとりをすることの方が有意義であると考えています。ですので、私個人の意見を言うと、若い方々に高めてほしいと思うのは、適切に人とコミュニケーションを取るための、国語力と論理力ですね。

難易度の高い仕事だからこその達成感

ーーRevComm社では、これまでとは少し領域が違う企業でのお仕事ですが、その際に心境の変化はありましたか。

正直に言うと難易度が高いなと日々感じています。反対に、難易度が高いからこそ、広報に関してのキャリアだったり、自信に繋げられることができるなと強く思います。

一般消費者向けのサービスではないため、広報として一から我々のサービスや取り組みに関心を持ってもらうための方法を自ら考える必要があります。そのためにはどうすればいいのかを常に考え、突き詰めなければいけない点が難しいところであり、やりがいを感じられる部分です。だからこそ、実現した時にはとても嬉しいですし、それをできるようになれば自分のキャリアアップにつながると日々感じています。

ーーキャリアで必要な力というのは、先程お話しいただいた国語力にも繋がりますか?

そうですね。国語力はこの仕事をしていく上で、ある意味必須の基礎体力みたいなものです。それにプラスして必要とされているのが、発想力や発想転換力。商品が世の中にとってどれほどの価値を持つかをより多くの人に知ってもらうには、時には情報の受け手である消費者の立場に立って考える作業が必要になってくるため、とても難しいです。一方で、それができるようになれば非常に説得力があると考えながらやっています。

仕事のカギとなる“多様性”

ーー北村様にとって広報PRとは、なんでしょうか?

一人一人広報の言葉の定義が違うので難しいのですが、やはり自分がいいと思ったサービス、情報を「より広く人に伝えたい・知ってもらいたい」と考えながら、その価値を広めることが広報の仕事であると思います。またそれが達成できた時に感じられるやりがいが広報の魅力です。

ーー北村様が、今後抱かれている展望についてお聞かせください。

仕事面では、現在広報としてメディアリレーションの中心として仕事に携わり、そこで新しい経験や勉強をさせていただいています。その中で今後、IRにも力を入れ、より広義のステークホルダーとのリレーションを構築できるようになっていきたいと考えています。それにはかなりの知識が必要だと思うので、その知識をインプットしていきたいです。

個人的には、プライベートでもホッパーのように歌、和太鼓、スキューバダインビングなどいくつかの趣味を持っています。趣味であっても、やはりその道のプロフェッショナルな人たちから習うと、その人たちが持っている価値観が、ビジネスで携わる人たちとは全く異なることに気付かされます。そういった多様な価値観に触れたり、様々な芸術や文化を自分の目や耳で体感し、その道のプロの人たちをリスペクトすることは、グローバルな場面でもきっと役立つのではないかと思います。

北村直子

株式会社RevComm広報。国際規格に関わる財団法人ISOに勤務後、一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会に勤務。その後英語教育業界での数回の転職を経て、2021年に株式会社RevCommへ入社。

聞き手 廣川美雨

株式会社クロフィー インターン
立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部3年

編集後記:取材を通して、私がこれまで想像していた広報のイメージとは違い、人と人をつなぐ縁の下のような存在であるということを今回の北村さんのお話で知ることができました。また、様々な転職を経験され、その度にそれまでのご経験や展望をもとにステップアップされる姿勢に学ぶことが非常に多かったです。また仕事やプライベートにおいても常に新しい価値を探求されているところに感銘を受け、とても有意義なお話をたくさん聞くことができました。

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