広報PRの面白さとは?PR代理店や大手IT企業を経てフォースタートアップスへ

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ベクトル社やLINE社で経験を積み重ねた後、現在は成長産業を総合的に支援するフォースタートアップス社でPRを担当する堀仁美さん。これまで、一貫して広報PR業務に関わってきた堀さんが、多様な環境下で得た教訓は何だったのか。キャリアの道程を振り返る中で、堀さんの仕事に対する価値観に迫った。(聞き手&執筆:吉田陽香 編集:小南陽子 連載企画:学生が迫る、広報PRの担い手の素顔)

マスコミへの関心が高まった大学生活

ーー学生時代はどのようなことに関心がありましたか。

大学では、産業社会学部でメディア社会学を専攻していまして、マスコミやメディアといった広く情報を届ける媒体に興味がありました。放送部のアナウンス部として、お昼の校内放送や、学園祭の司会などを担当しました。放送部の中には他に音声部や制作部、映像部もあって、実際に学生だけで配信したり、映像を作っていました。学生生活全体で、マスコミに関わってきた感じですね。

ーー本格的ですね。そもそもマスコミに関心を持つようになったきっかけは、明確にはございますか。

高校の時にアナウンサーってかっこいいな、と漠然とテレビで見て思って、放送業界に関心を持ったことがきっかけだと思います。言葉の力で、いかようにも情報が届けられるのが面白くて、文学部とも少し迷いました。ただ、実際に部活にしてみて、自分が表に立って発信していくよりは、どんな情報をどのように届けたらいいのか届ける内容を考える方が私自身が面白みを感じることに気づきました。そのあとのゼミの活動がきっかけで、関心が広告に寄っていった形だと思います。

ーーゼミでの活動で、ご自身の関心のある分野が明確になったんですね。

個人でもチームでも、働き方のコツを掴んでいった

ーー新卒で、PR代理店を選ばれた理由を教えてください。

企業にコミュニケーションプランを発表するなどの広告系のゼミでの活動がきっかけです。ゼミで広告業界に興味を持って、就職活動でも広告業界全般を受けていました。就活でマスコミを調べていく中で、コミュニケーション次第で情報がいかようにも伝わっていく点で、PR業界が面白ろそうだと感じました。会社を選んだのは、総合PR会社の中で最大手という点が決め手でした。

ーー入社前にその会社に対して抱いていた印象と、入ってからの実際の印象でギャップは感じられましたか。

そもそも忙しい業界だというのは事前情報として耳にしていたので、そういう部分のギャップは全くなかったです。最初からメディアに電話をかけたりと、外部の人との接点もありました。入社してすぐに企画書の一部を担当することもあり、若くても裁量を与えていただけることがとても良かったです。

ーー特に印象に残っている、上司からの教えや教訓はございますか。

私は、一定の納得できるものに仕上げてから資料などを提出する進め方をしがちなんです。ただそうすると、自分の完璧を求めても、 相手の求める内容とは完全にずれている場合もあります。ドラフト段階でとにかく早く出して、すり合わせていく業務スタイルは、何度か指導を受けて調整していきました。

ボールを自分の中で溜めていると、それがきっかけでスピードも納期も遅くなります。内容もずれていたら本当に1からというか。とにかく早く大方を見せてから詳細を詰める感じです。フィードバックをもらう回数を増やすように、教えていただきました。なので今でも、相手と一定の基準をすり合わせてから業務に入ることを意識しています。

ーー特に大変だったことは何ですか。

複数社のプロジェクトを並行して進めていくスタイルなので、並行する量が増えると、今どこまでやっているんだっけ、と進捗を追うのが難しかったです。また、自分1人で完結する仕事ではないので、一案件数人でチームを組んで進める中で、 誰がどこまで何をやっているか把握することも大変でしたね。

広報への関わり方を変え、代理店から事業会社へ

ーーなぜ、次はIT企業へ転職されたのでしょうか。

複数の企業を相手にする代理店から、企画を内側から深く考えていける事業会社の広報へ行きたいな、と思っていました。その中で1つに決め切ることができなくて。事業会社として深く携わりつつも、1人で複数のサービスを担当していく進め方が、前の会社とも良いようにスライドできて、働きやすいと思い志望しました。

ーー職場を代理店から事業会社に変えたことで、得られた学びは何ですか。

アウトプットを自分の中でイメージしてから依頼しないといけないことが大きな気づきでしたね。代理店時代の取引先の窓口は、事業会社の広報やマーケティング担当者なので、PRの良さをそもそも分かって発注をしてくれている人たちで、共通言語も多く話がすぐに通じました。一方で、事業会社の広報では、社内での情報のやり取りが大事なんですよ。例えば、何かのデータを出してもらいに事業部に頼むこともありますが、「出してどうなるの」と聞かれたこともあります。データを出すことでそれがどう活きていくのかまでしっかりと説明しないと、そもそも引き受けてもらえない時もありました。

ーー社内のコミュニケーションでアウトプットのイメージを出していく際に、工夫されていたことを伺いたいです。

「どの文脈の中で使いたいデータなのか」と、「プレスリリースの情報がどのようにメディアに引用される可能性があるか」は、1個のデータをもらうにしても事業部の方に共有していましたね。データが膨大だと結構時間もかかりますが、説得力を持たせるために、一連の資料を作ったこともあります。

ーーウェブディレクターやコンテンツマーケティングなど様々なお仕事をされていたと伺いました。その中でも特に、印象深かった仕事をお聞きしたいです。

コンテンツマーケティングに異動してから、アプリそのものをどう使ってもらうかの施策を考えて記事を作ったり、 キャンペーンを検討しました。サービスが沢山あって、アプリに行き着くまでも色々な動線があるんです。使い道が本当に人によって違うので、どういうポイントをついたらいかに多くの方に使っていただけるのか、考えることが難しかったですね。

また、ユーザーにセキュリティ意識の向上をしてもらうためのプロジェクトも担当しました。複数の他社IT企業のセキュリティ部門の方と検討していきましたが、 会社によって守りたいセキュリティの観点が違い、共通点を見つけることが難しかったです。例えば、パスワード1つとっても、複雑にした方が良いという人もいれば、忘れてしまったら意味がないから、覚えやすいものにしつつ、ツールを使っていこうという考え方もありました。 共通解を見つけることが大変でした。

黒子に徹することを常に意識

ーーその後、成長産業を支援する企業フォースタートアップスに転職されたということですが、理由を教えてください。

改めて広報職に就きたいと思った時に、せっかく仕事の幅を広げたので、広報としての業務領域の中で、色々なことをやりたいと思ったんです。そんな中、スタートアップに興味を持ち、転職活動をしていました。なかなか決めきれなくて迷っていた中、当時転職相談していたフォースタートアップスのヒューマンキャピタリストに「スタートアップを支援しているうちはどうですか」と声をかけていただき、なるほどと。スタートアップに行きたいと思いつつも決めきれなかった私は、支援する側に回ったらいいんだと。そういう考え方が面白いと思い、フォースタートアップスに入社しました。

ーー志望先の企業は最初から決めていたわけではなくて、転職活動をされていた中で見つかったんですね。

本当に巡り合わせというか。私の立場は事業会社の広報ですが、会社としては、様々な方面でスタートアップを支援しています。今までの経歴が良い様に合わさった感覚です。

ーー前職は大人数で、縦割りがしっかりとされていた環境だったと思います。一方で、現在のフォースタートアップスは少数精鋭ということで、どちらの方が働き方は向いていると思われますか。

どちらの方が向いているかというと難しいんですけど、今は今でとてもやりがいを感じている、という回答になりますかね。広報業務の中でルールが明確に決まっていない部分もあるんです。そこを相談しつつ自分で考えて決めていくところが、 面白さの1つだと思いますし、やりがいを感じますね。 どちらも経験できて本当に良かったなと思っています。

ーーフォースタートアップスで、特に大変だと感じることは何ですか。

携わってきた業界と全く異なるので、そこが大変です。私の経歴を振り返ると、toCサービスの広報としてPRを担当することが多かったです。代理店時代、私が所属していたチームはエンタメや飲料メーカーの案件が多かったですし、その次は完全にBtoCでした。それが今はBtoB領域が多く、経済部の記者とのやり取りが多いです。市場の流れをキャッチアップしなければならず、私自身も本当に勉強の日々です。
また、組織が拡大中で、ルール化されてない部分も見つかります。そこをどう詰めていくか。中と外の両側面で難しいと思っています。

ーー日々お仕事で意識していることや、心がけていることを教えてください。

支援する立場の事業が多い会社なので、メインで事業を打ち出しにくい要素がありますね。そこにいかに焦点が当たるか、考えながら動いていますね。

例えば、フォースタートアップスでは「STARTUP DB」という成長産業に特化したデータベースも運用していて、資金調達のランキングを毎月出しています。自社だけではなくて、他のスタートアップ企業の情報も、ランキングを通してどういう風に発信していけるのか考えています。

ーー情報収集はどのようにされていますか。

フォースタートアップスがご支援しているスタートアップが会社にいらっしゃって事業を説明する勉強会を行っていただく機会が多いので、参加して学んでいます。日常のキャッチアップでいくと、Twitterで経済系の情報を見たり、新聞やビジネス誌、経済系動画メディアを見ています。

ーー堀様が考える、スタートアップの特徴は何でしょうか。

スタートアップ企業を見たり接する中で、本当に柔軟性と熱量があって応援したくなります。スタートアップこそ少数精鋭なので、チーム一体となって、皆でサービスや事業を盛り上げていくんだという熱量がとてもあるなと感じます。一方で、当社にも共通するんですけれども、ルールが決まってない部分がまだまだ多いことが課題だったりします。何かあった時にすぐに対応して、ポジティブにチームで一丸となってルールを作り上げていくことが何よりも大事だと、見ていて思いますね。

広報の魅力とは

ーー広報やPR活動の魅力は何だとお考えですか。

事実の範囲はもちろん変えられないですけれども、外で起きている出来事と、自社の情報を組み合わせて世の中に接続できることだと思います。また、1つの情報も色々な側面から見ることにより、ポジティブに発信することができます。ネガティブなものをポジティブに変えることは不可能でも、広報の力で、ネガティブな要素を最小限に抑えることは可能です。見る角度によって、伝わり方が変わって面白いと思いますね。

ーーどのような特性の人が、広報の仕事に向いていると思いますか。

どんな出来事も悲観的にならずに、ポジティブに変換していくことです。基本的に広報は、「自社の情報を世の中の関心とどう結びつけるか」と、「いかにポジティブに発信していくか」が大事になってきます。もちろんネガティブなことが起こったら、事実はそのまま出さなくてはなりませんが、一つのことに真摯に向き合い、どんな状況も楽しんで、どう前向きに動いていったら良いか考えられる人が向いています。

他には、好奇心旺盛な人、変化に強い人ですかね。世の中ごとにも、常に関心を向けていないといけないので。日々変わる情報を、キャッチアップし続ける部分に面白さを見出せる人が、合っていると思います。

ーー堀様は働き方として、同じことをひたすらやり続けるよりは、色々な種類のことを経験したい感じなのでしょうか。

まさにそうですね。広報という職種を軸に、色々な分野や業界を知ることができる点で、自分には広報が合っていると思います。

ーー広報やPRの仕事をされているのは、好きだからなのか、得意だからなのか、どちらでしょうか。

難しいですね。好奇心旺盛という点で、楽しんでやれているのかなと思います。飽き性なので、基本、自分一人で完結する習い事も続かないんですよ。特性としては、適応性がある程度あると思っています。どんな人にも相当嫌われることはないと思いながら生きてきているので(笑)。そもそもの好奇心旺盛な性質が、広報の特性と合って、楽しんでやれているのかもしれないです。

社員相互の投票による月間MVT(Most Valuable Talent)制度の「The Team」賞を受賞した際の写真

スタートアップ全体を盛り上げたい

ーー広報やPR以外では、どのような業界・職種に関心がありますか。

特定の業界を挙げることは難しいですね。自分がユーザーとして接しないようなBtoBのスタートアップでも、事業の考え方が面白いなと思うことがあります。海外のものを取り入れて日本にローカライズして進めたり。どの企業も面白さがあるので、1個に決めきれません(笑)。結局この先も、多分自分の中で1つに絞ることはできないと思っています。なので、もし広報ではなかった場合、複数の事業を組み合わせるディレクターや、プロデューサー、企画といった職種をやっていたかもしれません。例えば、ゲームのプロデューサーだと、ゲームという分野に所属はしていても、コラボ先が食べ物など、異業種とコラボする可能性もあります。どこかの分野に入るとしても、そこと違う分野を組み合わせて、仕事としていたかもしれません。

ーー今後5年以内に、成し遂げたい目標を教えてください。

新しい分野に挑戦するよりは、今取り組んでいることを突き詰めたいという答えになります。そもそも成長産業の業界に、どうすれば世間の目が向くのか、まずは考えていきたいです。1人でも多くの人が、この業界に転職してほしいですし、スタートアップで働くことは楽しいと思ってもらいたいです。「スタートアップのために」という社名の通り、今いるこの会社から世間にどう貢献していけるのかというところに取り組んでいきたいです。

堀仁美

新卒でベクトルに入社し、広報やPRを担当。その後転職したLINEでは、2年サービスPR、2年半コンテンツマーケティングに携わり、広報としての業務の幅を広げる。2023年現在、フォースタートアップス社で広報PR業務に携わる。

聞き手&執筆担当 吉田陽香

株式会社クロフィー インターン
早稲田大学国際教養学部4年

編集後記:今回お話を伺い、転職する理由は前向きなこともあると改めて痛感しました。希望職種に携わってそこで満足するのではなく、環境を随時変えることで、別の立場からも職種の技量を磨いていく。そのような堀様の働き方は自己成長も社会貢献もでき、大変魅力的に感じました。また、堀様がどの会社での経験についても、楽しそうに話されていた様子が印象に残っています。ご自身の特性と企業の働き方が合っていた、とおっしゃっていたように、私も「好き」と「得意」が、両方当てはまる職場を見つけたいと思いました。

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