250冊以上のビジネス書を要約して辿り着いたこと。読者への橋渡し役とは…

記者・編集者・ライター・インタビュアー・カメラマンら、メディアの現場の方々を若い目線で紹介していく「学生が迫る、メディアの担い手の素顔」シリーズ。

今回伺った、インタビューや本の要約を手掛ける松尾美里さんは、「読者に何を届け、どう働きかけたいか」を大事にされているという。謙虚に耳を傾ける聞き手役を数多く経験されてきた松尾さんに、今回は話し手になっていただいた。(聞き手:栗山真瑠 北海道大学)

画像3

読者目線のビジョンから逆算したプロダクト

ーー松尾さんは現在、ビジネスパーソン向けにビジネス書の要約を提供するフライヤーで、インタビューや要約の執筆・編集をされていますね。本の要約で大事にしていることは何ですか。

大事にしているのは、本をじっくり読み込んで、その本の魅力が何かを考えることです。これからの時代に求められる働き方やテクノロジーという類いのテーマには、ビジネスパーソンの多くが興味をもっていると思います。そのような社会のニーズも常に勉強しながら、本の選書や要約に活かしたいという思いでいます。

ーー松尾さんから見た、本の要約におけるフライヤーならではの特長はありますか。

フライヤーのバリューの1つに「三方良し」があります。要約を読んで「勉強になった」とか「面白かった」で終わるのではなく、実際にその本への興味をもっていただくことで、本の購入に繋げることができます。要約を配信することでユーザーだけでなく、著者・出版社、書店にもプラスになる動きがフライヤーの理想の形です。

ではそれを実現するためにはどういった記事を届けたらいいか、日々周囲の方や本から勉強させていただきながら、試行錯誤しているという感じです。

挑戦者の生き様を伝えたい

ーーこれまでに経営者やプロスポーツ選手、作詞家ら、数多くの書籍の著者や面白い生き方の実践者へインタビューをされてきていますね。インタビューのテーマとなるトレンドの収集について教えて下さい。

日常生活の色々な場面から収集しています。フライヤーのインタビューの企画の場合ですと、出版社の方から著者へのインタビューのお声がけをいただく場合もありますし、要約をさせていただいた本の中から、さらに深掘りしてお届けしたい本をもとに企画する場合もあります。ではそのテーマについて、世の中では、特にビジネスパーソンはどんな興味や課題意識をもっているのだろうか。そんなことを、人との会話のなかでも、日常的に情報収集するという感じです。

ーー今までのインタビューのなかで一番印象に残った人について教えてください。

まずどんなインタビューをめざしているのかというのを簡単にお話してもいいですか。インタビューを趣味で始めたとき、「挑戦している人の生き様をお聞きして、伝えたい」というのが原点にありました。その方がプロフェッショナルとしてどんな思いで活動を続け、新しい世界観を届けようとしているか、という話はどれも印象的で。起業家や新規事業を立ち上げる方だけでなく、それをフォロワーとして支える方もいますよね。それも挑戦の1つだと捉えていますし、そうした生き方も含めて、どの生き方も素晴らしいものだと感じています。それを届けることで、受け取った人が、自分の悩んでいることを客観視して前向きな気持ちになったり、何らかの行動を起こしたりするきっかけになればいいなと思っています。

どんな生き方も素晴らしい。それを前提として、特に印象に残っている方というと、ビジネス書のヒットメーカーである多根由希絵さんの編集にかける思いには、心から感動しました。著者への寄り添い方のみならず、本に関わるステークホルダーの方々に常に感謝の気持ちをもち、示している、そんな謙虚なお人柄も含めて、彼女の仕事への姿勢に尊敬の念を抱いています。

ーーインタビューでの記憶に残る失敗談はありますか。

実はうまくいったと感じたことってほとんどないんです。もっとこの分野を調べておけば相手も話したいことを膨らませたんじゃないか、などと反省の連続ですね。自分の思考が及ばなくて、「それは自分の言ったことと違う」と言われることもあって。ですので、その方が大事にされている価値観は何なのか、常に深く考え、確かめていくことが必要なのだと感じています。

ーー周りの方からのフィードバックで気づいたご自分の良さはありますか。

インタビューで関わってきた方から「人が好きなんだね」とよく言われます。人に興味がある」ということでしょうか。

ーー話題が質問の内容から逸れた時、どのように軌道修正しますか。

時間に制限があるときがほとんどですので、質問とは違う方向に話がどんどん膨らんでいく時は、もっと聞いていたいと思いながらもやむなく、「ずっとこのお話を聞いていたいのですが、もう1つお尋ねしたいことがありまして」とお伝えします。そう言うと、あまり大きな違和感なく、本題に戻ることが多い気がします。

画像1

(これまでのインタビューでメモをとってきたノート)

社会、他者への関心から「聴く、引き出す、伝える」へ

-ー京都大学文学部を卒業されていますが、文学部からインタビューにつながった契機はありますか。

いわゆる文学部のイメージとは違うかもしれませんが、専攻は社会学でした。元々は臨床心理学と迷いつつ、次第に興味分野が社会学に広がっていきました。世の中に根強く残っている社会課題について考えるのが好きでしたし、マイノリティとされる方々の課題には特に興味があり、「この人が本来もつパワーを発揮できる場があればいいのに」などと感じることも多かった気がします。常に関心が社会や人間にあったという意味では、それはインタビューへの興味と関連しているなと思います。

ーーその後、Z会に入社されてフライヤーに転職したきっかけは何ですか。

Z会には5年間勤めていて、仕事も楽しいけれど、当時趣味で行っていたインタビューが好きで、それをいずれ仕事にできたらいいなと考えていました。当時はフライヤーの本の要約の仕事を副業で行っていて、これもすごく面白いなと思っていたところに、フライヤーの仕事を紹介してもらって。フライヤーでちょうどライターの正社員募集をするのでどうかとお声をいただいて、入社に至りました。本当にご縁という感じです。

画像2

志への過程はこだわらない

ーー働き方改革に伴って、変えていきたい部分、今のスタイルを貫きたい部分はありますか。

私自身はこだわりはないです。例えばリモートワークも手段と捉えていて。周囲でも、時間や場所に限定されないような柔軟な働き方をされている方もいらっしゃいます。選択肢が増えることは本当にウェルカムです。大事なのは自分がどうしたいかではないかなと。

「働き方をどう変えていくか」は、その人のビジョンが何であるかによって違うと思います。場所や時間の制約があっても家で自分なりに働ける機会が増えるということは素晴らしいことだと思います。労働力不足と言われているなかで、優秀な能力や意欲を持っている人が働けていないという状況は、マクロで見ても、もったいないと思います。また、個人の生き方という観点でも、個々人の能力が発揮されていった方がいいと思うので。選択肢が広がることで、人と社会の可能性も広がるというようなイメージを抱いています。

ーー今後AIに代替してほしい作業、AIでは代替出来ないと思う作業はありますか。

これにもこだわりはありません。何を目指すかというビジョン、プランニングは人間がやるところだと思います。とはいえ、人間が対面で接するほうが良いソリューションが生まれるとは限らないかなと。それすらも「こうあるべき」だということはないですね。

-ー今後チャレンジしたいライティングはありますか。

これから模索していきたいですね。インタビューを通して、新たなジャンルのプロフェッショナルを知って世界が広がることは大きいので。自分で企画、想像できない世界を広げてくれる人の話を聞くのは格別な機会だと思います。未知の分野の人に出会えば、面白い視点や新たな価値観など、視野が広がりますね。

とりわけ、その道を極めようとしている人が、「この場だから話せた」と思えるような場をつくっていくことが目下めざしているところです。

一例ですが、 NHKの人気番組「100分 de 名著」のプロデューサーの方にインタビューの機会をいただいた時、本の執筆動機に限らず、番組作りにかける思いを聞いて、謙虚ながらも静かな炎を宿している姿を目にしました。まだまだ修行中の身ですが、こうした尊い瞬間を積み重ねていけたらと思っています。

スクリーンショット 2020-06-19 16.49.18

松尾さんの過去記事ポートフォリオ

松尾美里
株式会社フライヤー コンテンツマネージャー
日本インタビュアー協会認定インタビュアー
株式会社Z会を経て、2015年より株式会社フライヤーに参画。フライヤーのほか、経営者、人・組織に関する専門家へのインタビューを行う。過去記事のポートフォリオはこちらから。

聞き手&執筆:栗山真瑠
株式会社クロフィー インターン
北海道大学獣医学部三年

インタビューを終えて:発言者の思考を「傾聴」しつつ受け取り手の心を打つ、両者に寄り添う姿勢が想像以上に難しいということを感じました。日常に溢れている記事は、インタビュアーのそうした思いの上に届けられていることを最初の取材で知る機会に恵まれたことに感謝すると共に、今後に繋げていきたいと思います。

記事一覧へ戻る

Media Book Newsletterに登録しませんか?

近日配信開始予定のMedia Book Newsletterにご登録いただくと、メディア関係者の関心事を掘り下げるインタビュー記事や、広報PR関係者の最新ナレッジなど、メディア・広報PRの現場やキャリア形成に役立つ情報をお送りさせていただきます。ぜひ、メールマガジンへご登録ください!


※上記フォームへメールアドレスを入力後、本登録を行わないとメールマガジンは配信されませんのでご注意願います。
※本登録のご案内メールが届かない場合、迷惑メールボックスをご確認願います。