EdTechスタートアップ1人目広報がまず注力したこととは?ーー記憶アプリ「Monoxer」のメディア露出は1年間で3倍へ、Slackとnotionによる社内報も功を奏す

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記憶定着をテーマに置く学習プラットフォーム「Monoxer」を提供するモノグサ株式会社(以下、モノグサ)。同社唯一の広報担当者として、内外にその有効性を伝え続ける中村大志さんは、マイナビとPRエージェンシーを経たのちにモノグサへ入社した。最終選考でボードゲームを実施するというユニークな採用ストーリーの背景や、スタートアップ広報の役割、広報PRの重要スキルなどを聞いた。(聞き手:風間一慶)

マイナビで広告に興味を持ち、PRの世界へ

ーーまず、中村さんがモノグサに入るまでの経緯についてお伺いしたいです。

大学卒業後、私は新卒でマイナビに就職しました。そして、そこで求人広告に関する営業職に従事することになります。

もともと私は、就活時に明確にやりたい仕事がある学生ではありませんでした。あえて言うなら説明会で様々な企業の話を聴くことが好きだったので、それに関わる人材系の仕事は面白そうだと感じていました。内定をいただいたものの入社前は「何をするんだろう」という気持ちが強かったですが、入社後広告の世界に触れ、面白いと感じました。

ーーその後にPRエージェンシーへと転職されます。転職の動機は広告に興味を持ったからなのでしょうか。

そうですね。マイナビでは営業職だったのですが、並行して広告の訴求内容も検討する業務もしていました。宣伝会議の主催する「コピーライター講座」にも毎週通い、PRに関する興味が湧いてきた時期でもありました。そのような機運もあってか、PRエージェンシーに転職しました。

ーー手掛けた企画について具体的にお伺いしてもよろしいでしょうか。

印象に残っているのはキノコのPR企画ですね。食品に関連した案件に多く携わらせていただきましたが、その中でもこのPRは印象的でした。一般にキノコ類は冬が旬だと思われがちですが、現代では工場生産が主流なのでオールシーズン食べることができます。そこでメーカー側の「通年で売りたい」というニーズに応えるためにPRを企画しました。健康効果を共感いただいた医師や管理栄養士の先生と一緒にマスメディアを中心にアピールする戦略が功を奏し、ヒット商品を作れたことが嬉しかったです。

もう一つ印象的な例を挙げると、ヨーグルトのPRは今でも記憶に残っていますね。テレビはスポンサーの関係があるので、ヨーグルトのような業界大手が定まっている領域はブランドの露出が難しいんです。なので視点を変えて、当時施行された法律と絡めた文脈で様々なメディアに取り上げていただきました。

ボードゲームをする会社

ーーここからはモノグサでの中村さんの活動についてお伺いしていきます。まず、モノグサの第一印象はどのようなものでしたか。

最初はモノグサについて知らなくて、スカウトメール経由でお話を頂きました。第一印象として、ボードゲームをする会社というのを聞いたんですよ。面白いなと(笑)。ボードゲームは私も好きだったので、それで惹かれた面もあります。

モノグサは最終選考時にボードゲームをするんですよ。私も最終選考でボードゲームをしました。お互いのことを知ることができたので理に適ってるなと思います。CFOもそういう方針を話されていて、応募者も通常の面接だけではわからない雰囲気を垣間見れる良い機会になっています。

ーー最終面接でのボードゲームはどのような雰囲気なのでしょうか。

良くも悪くも面接感はないですね。ただみんなで楽しんでいるだけです。変に忖度することもありません。私の最終面接の時は1時間くらいやりましたね。

面接以外でもボードゲームを日常的にしています。月初の全体会議の後はオフィスに集まっているモノグサメンバーたちでグループに分かれてボードゲームをするんです。

ーーそのような選考を経て入社されるのですが、最初に着手したのはどのような業務ですか。

前職がパブリシティを通して売り上げに貢献する施策がメインだったので、モノグサ入社初年度はそれを活かしたものに労力を割いていました。モノグサのプロダクトのメディア露出を増やすために、テレアポのような形から記者の方に企画を提案して掲載をいただいたケースもありました。結果的に、メディア露出件数は前年比約3倍に増えました。テレビや全国紙でも掲載いただけるようにもなり、教育やスタートアップ関係を中心に一通りのメディア関係者へ情報を届けられる素地はできたと感じています。Monoxerのプロダクトに関する話だけではなく、ボードゲームのカルチャーや営業組織についてなども取り上げていただけるようになりました。

入社してすぐは「早く明確な結果を出さなければならない」という焦りもありました。そんな中で、日経新聞に「Monoxerの利用によってある学校の英検合格率が2倍以上に上昇した」という記事を掲載いただけたんです。その時にCEOを中心にセールス担当者がとても喜んでくれて、プロダクトの定量的な成果を発信することの重要性を実感しました。そして、こちらが深い説明をせずとも、自発的にPRの成果を連携してくださるセールスメンバーの優秀さにもびっくりしました。

そして現在の業務は社外広報と社内広報、それに採用広報とマーケティングのWEBセミナーと活用事例記事を担当しています。

ーー現職と前職の違いを感じることはありますか。

前職は代理店として複数の案件に関わっていたんですけど、現在は一つの企業とプロダクトにフォーカスしているので、その面では結構違いますね。フォーカスしているだけに、広い視座で深く考える事が出来るようになったと感じています。

モノグサ唯一の広報として内外に発信

ーー現在は中村さんが一人で広報を受け持っているとお聞きしました。どのような時間配分で業務を行っているのでしょうか。

一番時間を割いているのは、社外広報です。昨年は、ウェブセミナーの開催や活用事例にも多くの時間を充てていました。現在は採用広報と社内報の制作にも一定の時間を使っています。

ーー社内報について、詳細にお聞きしてもよろしいでしょうか。

社内報は今年から始まった取り組みで、Slackとnotionを組み合わせたものを毎月配信しています。広報が1人なので「いかに運営コストをかけずに効果を最大化できるか」という観点で運営をはじめました。

モノグサではSlackをコミュニケーションツールに使っているので、日々流れていく情報をnotionに編集してまとめています。「Slackで振り返る~モノグサの日常~」と名付けています。

最近は企画じみたものも始めました。CTOが3ヶ月に一回、モノグサメンバーのためにHARBSのケーキを買いにいってくださるのですが、この前はその様子を潜入取材しました。それと、恐らくモノグサの社員が世界で一番遊んでいるであろう「恐怖の古代寺院」というボードゲームがあるんですけど、その魅力を社員にインタビューしたりしました。

「記憶」のサービスを提供するモノグサがワークする文脈

ーー記憶定着の学習プラットフォーム「Monoxer」とは、具体的にどのようなサービスなのでしょうか。

MonoxerはAIを活用して記憶定着をサポートします。人間がどの程度憶えているのか、どの程度忘れているのかをデータに基づいて計算してその人にとって最適な難易度で出題をし、記憶定着を促します。

例えば「Dictionary」という英単語を憶えようと思ったときに、最初に「辞書」という漢字を見てもDictionaryとはいきなりスペルを書けないと思うんですよ。そこでまずは4択のクイズ形式で出題します。間違えるとDictionaryとなぞればいいだけのモードになるんです。正解するとまた4択になって、その後にDictionaryを打ち込みなさいっていうブランクの問題になって、難易度がその人の記憶度によって変化するようになっているんです。

Monoxerは「記憶」を扱う学習支援サービスで、一般的にはEdTechと括られるようなものです。現在の主なターゲットは学校や学習塾を中心とした教育機関で、先生たちのサポートのもとそちらに通われている学生さんが記憶を定着させられるようになります。最近では専門学校、大学、社会人領域にも活用が拡がりつつあります。私としては、PR担当という立場からMonoxerを社会の文脈の中に落とし込んでいくようなこともできたらいいなと日々思っています。

ーー文脈ということですと、中村さんが書かれた記事を事前に拝読した際に「大きな文脈の中でワークするものこそPR」というセンテンスが心に残りました。PRの際に文脈を活かす事例としては、どのようなものがあるのでしょうか。

これから加わっていきたい文脈ですと、1つは外国人の小学生に向けた日本語学習のサポートです。外国にルーツを持つ生徒が、「日本語がわからないから」という理由のみで特別支援学級に入れられてしまうことが社会問題になっているんです。実際に、Monoxerは日本語学習との相性が非常に良いです。この解決の一助としてMonoxerが役立てる機会があったら弊社だけじゃなくて、社会にとっても非常によいことだと思います。

それから、先ほどのボードゲームも社会の文脈の中でワークした例かもしれません。ボードゲーム業界がコロナ禍で盛り上がりを見せていて、その一環として新聞にモノグサの取り組みを紹介してもらいました。

ーーそのような文脈への参加というのは、やはり広報ならではのものなのでしょうか。

そうですね。社会の文脈を読み解くのは広報、PRならではの面白さだと感じています。

ただ、広報は会社の顔であるという側面もあると思うので、もちろん取り扱うサービスへの愛や熱意も必須だと思います。私を媒介として様々な人がモノグサと出会うこともあるので、その意識は大切かなと。

「企画・ライティング・交渉能力」を磨く

ーー学生を含め、広報やPRにこれから携わりたい人が、早くから触れておいた方がいいコンテンツなどはありますか。

直感的に面白いと思ったものは大事にしたほうがいいんじゃないかなと思います。広告とかキャンペーンとか、自分が面白いと思ったものは研究してみてもいいかもしれません。インターネットであらゆる情報にアクセスできますからね。

それと、業界によっても全然違います。前職は食品を中心としたPRに従事していましたが、現在は教育領域のスタートアップに携わっています。当然、広報やPR以前に必要な業界の基礎知識は大きく異なります。そういった意味では自分が興味のある業界の事例から触れてみるのもいいかもしれません。

ーーそのような学生へのアドバイスはありますか。

私は新卒でマイナビに入って営業職から社会人生活が始まりました。いきなりPRに携わらなくて良かったと思っています。PRや広報は複合的なスキルが求められますが、私の場合は間違いなく最初の営業経験が活きています。

スキルは大別すると「企画・ライティング・交渉能力」の3つではないかと感じています。そのうちの得意そうな領域から社会人生活を始めてみるのも一つの選択肢だと思います。最近だとPR業界の新卒人気も高まっているという噂も聞いているので、まずはそれらのスキルを伸ばせる仕事に従事してみてもいいのかもしれません。

ーー最後に、今後のモノグサに関する展望をお伺いしたいです。

モノグサ広報としての今年度の目標は「非連続的な成長に貢献する」です。PRという立場から、どのようなことができるのか、新たなことを模索していきたいですね。

中村大志

2013年新卒で株式会社マイナビ入社。求人広告の営業に従事した後、2015年より食品・ヘルスケア専門のPRエージェンシーに入社して食品やサプリメント等の商材のPR業務に従事。2020年にモノグサ株式会社入社後、広報担当としてMonoxerや会社の社外認知度向上に向けてPR活動を行う。最近は、社内広報、採用広報、コミュニティにもかかわる。

聞き手&執筆担当 風間一慶

株式会社クロフィー インターン
明治大学 政治経済学部

編集後記:社内で唯一のPR担当ということもあってか、サービスへの解像度と熱意が卓越している、と感じました。PRはプロダクトの知名度をアップするだけではなく、そのプロダクトがどのような文脈に位置付けられ、どのような経緯でカスタマーの元に届いているのかを周知する仕事だと実感しました。これから企業の広告やPRを手掛けることに興味を持っている、全ての学生や社会人に通底する「熱意ある学び」が聞けました。

編集:庄司裕見子

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