週末女子のためのファッション&ライフスタイル雑誌『mina』が出来るまでーーコロナ禍でも売り上げが伸びる理由とは

ネットで簡単に情報を得られるSNS時代においても、いろんな思いから雑誌を手に取る人は一定数いる。今回は、2001年発行から今も変わらず愛され続けるファッション&ライフスタイル雑誌minaの編集者、石沢葵さんに、minaの一読者である学生インタビュアーが雑誌作りの裏側を取材した。(聞き手:川原紀春  編集:庄司裕見子  連載企画:学生が迫る、メディアの担い手の素顔)

本に囲まれる仕事がしたかった

ーー学生の頃から、ファッション雑誌を好んで読まれていたんですか。

昔から本を読むのが好きだったこともあり、漠然と将来は”本に囲まれる仕事”がしたいなと考えていました。なので、高校を卒業後の進路は、出版関係の講義がある大学を選びました。大学のキャンパスが神保町にあったことから、OBの編集者だったり、現役の編集者の方々が講演に来てくれたりと、結構メディアに精通している講義も多かったんです。その講義の中で、実際に雑誌を作成するカリキュラムもあって、そこで雑誌に興味を持ちました。

そこから、たくさんの方々にアドバイスをもらって『学生アルバイトやインターンを経験してみたら良いんじゃないか』と言われて、いくつかの雑誌にアシスタントとして働けないかとオファーを出しました。そこで声をかけてもらったのが、mina編集部だったんです。

ーー大学生の時の経験から雑誌に興味を持ち、結果的に出版社に入られたのですね。

そうですね。学生時代は、編集者の諸先輩方に多くのことを教えてもらいました。街角でお洒落な人に声をかける方法から、ラフや原稿の書き方まで、教えてもらいました。

ーー出版社内には色々な部署がある中、石沢さんはまっすぐmina編集部へ配属されたのですか。

私の場合は、mina編集部に採用されたという形でしたが、毎日のように出版社に出入りをしていたので、他部署の編集者の方からも「この案件を手伝って欲しい!」と言われて、インテリア雑誌の撮影をお手伝いしたり、料理本の撮影を担当したりと色々な経験をさせてもらいました。

月刊誌の企画事情

ーー石沢さんの担当は何ですか。

メインはファッション企画を担当していますが、月号によっては第二特集(ライフスタイル企画)も担当しています。担当編集者が数名いるので、担当が月号で変わるのも、月刊誌の特徴かもしれないですね。

ーー1つの号で大体どのくらいの企画を担当しているんですか。

ページ数で言うと約20〜30ページ、編集長から台割を渡されて1から企画や構成を考えます。

ーー企画を毎月考えるのは大変ではないですか。

正直大変なことはたくさんありますが、企画を考えている瞬間は楽しいことの方が多いですね。
あと、minaは特集企画は年間通して決まっているんです。なので、各担当が年間スケジュールで動いているのも一つの特徴かもしれません。

特集のテーマは、編集部にそれぞれの担当がいて、識者に取材したり、展示会やスタッフから吸い上げた情報をもとに、どういう企画にするかを編集長含めてミーティングしながら決まっていきます。

ーーでは、何号か同時に作るんですか。

そうですね。月刊誌なので、3号分くらいは常に動いています。そういう意味でも、年間の企画を考えておかないと動けないんです。

ーーやはり出版社は常に忙しいと聞きますが、お話を聞くと本当に忙しそうですね。

締め切りがある仕事なので、どうしても忙しい時期はありますね。例えば、入稿時期と次号の撮影がかぶってしまった時期なんかは、なかなかハードだったり……。体力勝負な職業ではあると思います。

ーー最近の企画で一番反響があった企画はどんなものですか。

そうですね、トレンドを扱う雑誌であれば、いわゆるバズったり、反響があったりする企画があると思うんですが、minaはスタンダードでベーシックなスタイルを年間通して紹介しているため、いい意味で人気企画が均等になる傾向があります。

具体的にいうならば、アウトドア特集記事などは、現在のトレンドとも合間って反響があったのではないかと思います。

ーーコロナ禍での雑誌制作はどんな感じでしたか。

コロナ禍は、撮影を一旦ストップ。撮影が出来ない中でも、どうしたら雑誌作りができるのか、担当編集全員が集まってアイディアを出し合いました。

結果、今までの撮影したデータや取材ネタを掘り返して再編集することに。具体的には、おうち時間に合わせて以前に別企画で撮影したモデルカットを使って、NETFLIXの情報をコンテンツとして届けたり。このように以前撮影したデータを使い、慣れない作業に試行錯誤しながらも、どうにかページを作っていましたね。

ーー今までで一番思い出に残っている企画はなんですか。

なんですかね、結構1ヶ月前のことは忘れちゃっているんですけど(笑)

直近でいうならば、新しいモデルをminaでキャスティングしたファッション企画ですかね。基本的に、新しいことをするのがすごく好きなタイプの編集なので、誰もやったことがない新しい切り口や見せ方を考えるのが好きなんです。

minaモデルという括りはあるんですけど、毎月出演してもらうゲストモデル枠というのもあって。そこに、ずっと出演してもらいたかった松木育未さんをキャスティングしたいと提案しました。最初は『若すぎないか』とか『今までのモデルとのバランスはどうか』など、様々な意見があったんですが、編集長に企画と一緒にプレゼンを行いました。編集長からGOサインをいただいた時は本当に嬉しかったですね。これからもどんどん新しいことに挑戦していきたいです。

雑誌制作に関わり続けて感じること

ーーminaに長く関わっていて、変化したと思うことはありますか。

編集長が変われば、雑誌のコンセプト(方向性)が変わるので、ずっと同じ雑誌に関わっているという感覚は、意外とないんです。

ーー私は小さい頃から雑誌を読んで育ったのでとても雑誌が好きなのですが、現代はSNSの発達で雑誌を手に取る人が少なくなっていると感じます。そこに関してどう思いますか。

雑誌が好きと言ってくれる子がいて嬉しいです。今の子たちにとって雑誌は少し高価なもの、貴重なものになっているのかなと思っています。多分webやInstagram、TikTokなどに色々な情報が溢れかえっていて、どれが正しい情報なのかを自分で見極めないといけません。どの情報を自分がどういう時にキャッチするかは自分次第で、多分その選定を間違えてしまうとブレてしまったりだとか、自分の世界観に合わないなと感じることもあるはずです。

そんな中、雑誌は情報が編集されているものです。情報は溢れかえっているけど、その中で編集者が集めて整理をしてきちんと編んでいる、情報が精査されている媒体。だから雑誌がなくなることはないのかなと個人的には思っています。

ーーどういうところから情報を得ることが多いですか。

展示会はもちろん、他にも広告のお仕事も担当させていただいているので「こういうファッションが流行るのか」と情報をストックする事も多いですね。とにかくリサーチは人一倍時間をかけるようにしています。

ーー誌面を作る上でどういうことに気をつけていますか。

雑誌を手に取ってくれた方々が少しでもワクワクしてくれたら嬉しいなと思って、企画や構成を練っています。でも、それが思ったようにいかず、いまだに反省する事の方が多いんですけどね。

雑誌が完成したら、編集部全員で振り返りを行っています。作って終わりではなく、きちんと自分が担当したページには最後まで責任を持つ。それこそがより良いもの作り繋がるのではないかと。

ーー活躍している編集者の特徴はなんだと思いますか。

謙虚な姿勢を持ち続けている人。

アシスタントの時に、先輩の編集者の方に教えてもらった言葉をよく思い返すことがあります。『編集者がすごいわけではない。だからこそ、私たちはずっと謙虚でいなくてはならない』。当時は、その意味の半分も理解できていませんでしたが、今、こうやって振り返ってみると、大切な事を教えていただいたんだなと感謝の気持ちでいっぱいです。

これからも作り続けていきたいもの

ーー雑誌minaに関してこれからどうしていきたいですか。

週末ライフスタイルのコンテンツをもっと充実させていきたいです。食や暮らし、旅行、アウトドアなど、読者が求めている情報をしっかりと届けていけたらいいなと思います。

石沢葵

大学3年のときに学生アルバイトとして、主婦の友社のmina編集部に入社。2018年、編集プロダクションknaxに移籍。現在は、雑誌制作に加えて、広告関連の制作など幅広い業務を行っている。

聞き手&執筆担当

川原紀春

株式会社クロフィー インターン
立教大学法学部国際ビジネス法学科3年

編集後記:愛読しているminaの編集者さんにインタビューできるということで今回のインタビューが決まった時から楽しみにしていました。石沢さんはとても親しみやすく、終始楽しくお話を聞かせていただくことができました。ただ私のminaへの想いを語り過ぎてしまい(本文中では省略)、それぞれの話に関する深堀りの時間が取れなかったことは大変反省しています。これからも1読者として毎月minaの発行を楽しみにしています。

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